風のクロノア/開発者リレーエッセイ
クリスマスの赤坂は寒かったの巻
多大なご迷惑をお掛けしながらもCDの企画が決定し、次は録音作業です。
元々CD1枚で収まりきらない数の音楽が詰まっている『風のクロノア』がCD1枚で遊べるぐらいですから、ゲームの中の音楽データは音質を少し犠牲にしてデータを小さくしています。
「わざわざサントラを買っていただくからには、良い音で聴いてもらいたい!」
これがサウンドチームと私の願いでした。

少しでも音をより良くする方法はないか?この目的の為に日本クラウンの担当の方とナムコのサウンドチームとの打ち合せが続き、決まったのが、音楽の開発機材とデータをスタジオに持ち込んで直接マスター(CDを作る為の原本のようなもの)に録音してしまうという方法でした。

作業日は年も押し迫った12月25日、クリスマスの日でした。
午後1時、赤坂にある日本クラウンのスタジオにお邪魔したナムコスタッフは、エンジニアの人と打ち合せしながらCD2枚分の音楽データをどんどん録音していきます。
ただし録音するといっても、ただ機材をつないで録音ボタンを押せばいいというものではありません。アルバム全体を通しての音のボリューム、音質、次の曲へつながるタイミングなどを考えながら作業を進めなければならず、その曲の感じを決めていく繊細かつ重要な作業でもあるのです。
そしてボーナストラックのSEの順番など、決めなくてはならない事もいっぱいあります。

録音作業が終了したのは夜中の午前2時でした。
そして開発機材を車に積んで開発スタッフを見送って、日本クラウンの担当の方と少し打ち合せをして、さてタクシーをつかまえて帰ろうかと思ったら、みんな迎車のタクシーばかりです。手を上げていても留まりゃしない。

クリスマスの真夜中、赤坂ではタクシーはつかまりません!
皆さんも気を付けましょう。


聖夜の首都高速ガード下に立ちすくみながら、私は
「あー、今までトラブルばっかり起こしていた報いだなあ。」
などとぼんやり考えていました。
特製シールで大あわての巻
CD本体は出来ました。あとはジャケットやレーベルなどパッケージを作らなくてはいけません。デザインのもとになるCGやイラストはたくさんあったので早めに日本クラウンへ送っていて、色々アイディアをいただきました。
その中で、ゲームや音楽を知らない人にもクロノアの世界を広めるためシールを付けようという企画をいただいて、即OKしました(てゆーか私が欲しい)。

さて、デザインも決まり、サウンドチームのメンバーからコメントも貰い、曲名リストのチェックも終わり、今日がパッケージの締め切りという日、肝心の吉沢ディレクターにチェックしてもらってない事に気が付いて急いでチェックしてもらいました。

「どうです、なかなかカワイイ感じになったでしょ?シールとか。」
「このシール、CGデータ古いよ。
 それにキャラクターの名前とか間違ってるし…。」
「えー!?」
「CGが古いから輪郭がカクカクしているし、“ムゥ”が“ムウ”になってるし、“フラムゥ”が“フラムウ”になってるし、それから(以下指摘が延々と続く)」

なんと、早めにデータを送ったのはいいけれど、新しく更新されていたのに気が付かずそのままになっていたのでした。
慌てて日本クラウンに連絡して、誤字を直してもらい、最新のCGを送り直し、ぎりぎり締め切りに間に合ったのです。これで間に合わなかったら、また発売延期になるところでした。
いやあ、よかったよかった。

おわりに
いかがでしたか?このような皆さんの努力によって、この『風のクロノア オリジナルサウンドトラック』は発売されたのです。

「なに言ってんだ、苦労の原因は全部おまえじゃないかー!」

いやあ、おっしゃるとおりです。でも良いCDになってよかったじゃないですか。はっはっはっはっは、あ、痛て、あ、ぶたないで、蹴らないで、ひえぇ