第8回:プログラマー【1】
伊藤 裕
自車・敵車の挙動、レースシステム全般を担当した伊藤です。

「リッジV」のグラフィックすごいですよねぇ。リアルですよねぇ。
絵がリアルってことは車の動きもリアルでなければおかしいんじゃない?
というわけで、物理シミュレーションで車を走らせることから開発スタート!

開発初期はPS2が無かったので、「ハードが無いのにどうやって作るんだ?」と思いつつ、自分の目の前にあるパソコン上で挙動のシミュレーションを作り始めて数ヶ月…。やっとまともに車が走るようになって、「おぉ、結構いい動きするよ。すごい俺!」と自信満々だったのです。

ところがコースが出来てきていざ走らせてみると、車が空を飛んだり、全然曲がってくれなかったり、後向きに700km/hで走り出したり…(これはこれで結構面白かった)。「これじゃ、リッジのコース走れないよ!俺だめかも」そりゃ確かに、200km/hでドリフトしながらコーナーを抜けていく車はありませんよ。そんな物理法則はありませんからね。でも、逆に言うと「シミュレーションの結果はあっているのでは?」とプログラマとしての自信を取り戻しつつ開発続行。

ここからがプログラマの腕の見せ所。リアルな動きとゲームとしての面白さ。
どこをどう取捨選択しまとめあげていくか…。作っては消し、作っては消しの繰り返しで、出来上がったプログラムを見ると「リッジの挙動の決め手はプログラムにするとわずか5行!」この5行にいったい何ヶ月かかったのやら。プログラムっていうのは作りこめば作りこむほど短くなっていくものなんですよ…。

そんなわけでPS2の描画性能に触れることもなく、開発期間のほとんどを車の挙動で終わろうとしてたのですが、最後の最後にタイヤスモークの描画を作らせてもらいました。
「やっぱり何か描画するのは楽しいなぁ。次は描画もやってみたいな…。次?」

リッジシリーズがここまで来れたのも、ユーザの皆様のおかげです。
ありがとうございます。次があったら、またお会いしましょう。

高橋和哉
こんにちは、プログラマの高橋和哉です。
今回のリッジでは、道路やビル・樹木など「動かないモノ」の描画と、それに関連したツールの作成を担当しました。

リッジレーサーシリーズの特色の一つに、コースの美しさが挙げられると思います。特に前作「R4」ではプレステの限界に迫るとも言われ、高い評価をいただきました。
今回はハードが新しくなり、ますます美しいコースでレースをお楽しみいただけたと思うのですが、いかがでしたでしょうか。

さて、せっかくの機会ですからちょっとだけ裏話などを。

ガイドブックでも触れた樹木ですが、最初に「道路沿いにちょっと並べる程度」と聞いていたため、多少処理を費やしてより自然に見えるようなプログラムを組みました。
ところが、しばらくして出来上がってきたデータを見ると、いたるところに凄い数の木が植えられていてビックリ!!と同時に、これだけ植えてもビクともしないプレステ2のパワーにも、改めて驚かされました。

夜のコース上では、街灯に明かりがともり光のフレアが広がります。でもよく見ると、これって車のヘッドライトの光と同じ……使いまわしだ!と思われるかもしれません。
実はこれ、見た目は同じですが中身はそれぞれ全く別のプログラムによるものなんです。おまけに担当したプログラマまで別だったりします(笑)。
こんなまわりくどい事をするのにも理由があるんですが、ともあれ見えない所にも様々な苦労が隠されています。

「リッジVをやりたくてプレステ2を買ったんだよ」
と言われるような作品を目指して頑張りました。皆さんの思い出の1本に加わることができれば嬉しいです。