菅野 昌人
エントラントの皆様、リッジシティの居心地はいかがでしょうか?

背景のビジュアルデザインを担当しました菅野です。

さてシリーズのファンである方は、この街が初代「リッジレーサー」の舞台であったことは御存知でしょう。その後「リッジレーサー2」「レイヴレーサー」等でもこの街は開放され、ドライバー達の熱き戦いの場として発展してきました。
そして2000年のリッジシティ。古巣のあの街が様々な都市計画により大改造が…、といきたいところですが、実はそんなに大工事が施された風にはしてありません。私自身、開発中はそうした「時間軸による変化」をあまり意識しないようにしていました。なぜならSYSTEM22基板とPS2の違いこそあれ、この街は同じリッジシティなのです。その為物理的な面よりも「イメージの拡張」を重視した設計にしました。
「この景色の向こうに見える世界を、皆想像しているに違いない」

頭上を走る高速、防音壁の外側、併走するトンネル、渓谷の向こう側、そしてスターティンググリッドの後ろ…。これらはいままで画面中に表示はされるものの、実際に走れたりはできませんでした。
「いままで行けなかったところに行けたら、どんなに素晴らしいだろう」
リッジファンなら誰しもが持ち得る、この純粋な好奇心を満たすには、街全体を「全て最初からこうであった」と感じさせる必要がありました。その為既存のモチーフを極力生かす方向に定め、かつPS2だからこそ可能ならしめる表現を加味することにより「リッジ世界そのもの」を感じるビジュアルを目指したのです。なので今回はそうした理由から、あえて時間軸を限定せず、また「オレ節」のようなものをなるべく抑えたパブリックな都市計画に努めた訳です。

実際リッジシティは公的な場所です。
実在の様々な都市景観を照らし合わせる事のできる、許容範囲の広いゲームビジュアルなぞ、そうそうありません(←若気の至り、活字の暴走)
南北に走る幹線道路の先、モノレールが辿り着く河の対岸、大きな駐車場に身近な何かを感じたり、オレンジに光るハロゲン灯や、窓に映る夜の煌きに一瞬身震いをしたのならばなによりです。過ぎ去っていく街並みに「何か近場を走ってるみたいだ!」と感じていただけたら、そこは既に貴方の「街」です。そうした日常性を感じるフックというものを沢山用意したつもりですが、これらが「時速200kmオーバーのスポーツカーを街中で乗り回す」という特異性を引き立てているのだとしたら、今回の都市計画は成功したといえるでしょう。

今日もRCFMにチューニングを合わせ、リッジシティを駆け抜けている皆様へ。
時には止まって信号待ちのそぶりをしてみるのも楽しいですよ。
その交差点の向こうに、貴方の部屋があるかもしれません。