風のクロノア/開発者リレーエッセイ
クロノアと私の2年間
クロノア担当になったのはもう2年以上前のこと。当時は“クロノア”の名前の影すらなく便宜上「3Dアクション(仮称)」と呼んでいたのですが。担当者になると、まだ画面も見られないような開発初期段階からこのゲームに関わることになります。開発の吉沢や小林からゲームについての色々な説明をしてもらうけれど、実際に“これは一体どんなゲームになっていくんだろう???”と期待半分、不安半分でした。開発企画者の頭の中では、具体的な映像が動いているのかもしれないけれど、やはり実際に見せてもらうまではよくわからないものなんです。特にクロノアはアーケードからの移殖作でもシリーズものでもない完全なオリジナルのゲームでしたから、どうやって売っていくか、そのためにはこんな仕様を入れて欲しいといった販売サイドからの意見をどんどん開発側に伝えるために、何度も何度も会議を重ねました。

例えば、プレイヤーの頑張りに対するご褒美として隠し面が欲しいとか、ゲームのテンポを早くして爽快感を出して欲しいとか、キャラクターを生き生きさせるために動きのバリエーションを増やして欲しいとか、ロード中にも何か演出を入れて欲しいとか・・・。開発側にしてみれば“好き勝手なことばっかり言ってぇ!”と相当ムカついていたことでしょう。
2年前の6月24日、会議で初めて「3Dアクション」の画面を見た時の主人公クロノアは、敵を膨らませて地面に置いて足場にする、というちょっと分かりにくい操作系で動いていたことを覚えています。もちろんその後開発側は今のようなシンプルで爽快感あふれる操作を考え出して見事成功したわけですが、それまでには色々な苦労があったようですね。


一体どんなゲームになるのか不安だったクロノアを一気に面白く感じるようになったのは、今の操作系でテンポ良く動くようになってからでした。これを編み出した小林はスゴイ!と本気で感心しています。実は小林とは同期入社なので、なおさら拍手を送りたいです。と内輪で褒めていてもしょうがないんですが。

開発とのパイプ役と並行して、雑誌社の方々に掲載用の素材を送ったり、取材の対応をする仕事をしている私は、編集部の方に「クロノア載せてください!」とお願いしたり、クロノアの良さを売り込んだりするなど外部の方と接する機会が多くあります。そうすると、外部の方からゲームについての厳しいご指摘を耳にします。もちろんクロノアがかわいいので“ひど〜い!”と思ったり、悲しかったりもしますが、開発途中でまだ改善の余地があるうちに聞ける意見ほど貴重なものはありませんから、とてもありがたいことです。これを冷静に受け留めなけらばいけないんだ!と言い聞かせて、開発サイドに伝えるようにしました。

何年間も“ああでもない、こうでもない”とクロノアの事を考えていると、いつの間にかクロノアがかわいくてしょうがなくなってしまって、ゲームを見る目も偏ってしまうんです。でも客観的にゲームをみようと冷静になれるのも厳しいご指摘と同時に嬉しいお褒めの言葉もたくさん聞ける立場にあるからだと思っています。編集部の方ばかりでなく、イベントに来たお客さんが「クロノアかわいい!」とか「絶対買うよ!」と言ってくれるとすごく嬉しくて、まるで自分が褒められてるのと勘違いしてしまうくらい嬉しいんですよ。ほんと、勘違いですけど。
ですからみなさんもどんどん忌憚のない率直なご意見を寄せてくださいね。それが次につながっていくはずですから。
夢の中までクロノア
長くなりましたが、最後に私の私生活にどれだけクロノアが入り込んできていたかというエピソードをひとつ。1年程前、友達の車の中で眠ってしまって目が覚めた時に「なんか右手の親指ずっと動かしてたよ!」って言われたんです。“そういえばあのBGMの中で二段ジャンプして走り回っていた気がする”と思ってちょっと恐くなりました。それも1回や2回の話ではなかったので、相当重傷でしたね。でも敵はムゥじゃなくて、見覚えのある身近な誰かだった気が・・・。
この状態からは去年の暮れ頃にやっと抜け出せたみたいです。その後は「タイタニック」のテーマをBGMにディカプリオと踊っている夢を見るという幸せに浸っています。そんな今でもクロノアのエンディングにはウルウルきちゃいますけどね。