2018/10/26

【ゲーム特許5選】太鼓の達人は企画段階、人間キャラ!バンダイナムコのゲーム発明

ゲーム の中には、新しい技術やアイデアが詰まった“発明の塊”と言っても過言ではないものがあるんだとか。一体、どんな発明なのか気になる……! ゲームやエンタメの特許専門家、バンダイナムコエンターテインメント・知財部の恩田明生さんに、同社の発明作品を聞きました!

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『太鼓の達人』『エースコンバット』などなど。奥深い特許の話

「特許制度があるからこそ、新しいアソビが生み出される」と語る恩田さん。ゲーム開発の現場では、知的財産部とプロデューサーやディレクター、クリエイターが積極的に連携して新しいアソビの仕組みを作っています。それこそがバンダイナムコエンターテインメントの強みでもあるんだとか。バンダイナムコエンターテインメントのゲームにはどんな発明が隠れているんでしょうか? 恩田さん、教えてください……!

■その1:『塊魂』~塊が大きくなるにつれて、カメラの視点が変わる画期的システム!~
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『塊魂』は、序盤は仮想カメラの視点がかなり近めなのですが、塊が大きくなるにつれて視点が引きになり、塊にくっついているものも全部映るようになります。

――発売当時、めちゃくちゃ衝撃的なゲームでした!

また、塊の大きさに応じて、くっつけられるものも変わっていきます。当時、こういったゲームに類似したものがなく、とても画期的だったので、ゲームシステムなどの特許を取得しました。

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塊魂のゲームシステムの特許出願フロー図



■その2:『太鼓の達人』~1本のレーンに「ドン」と「カツ」のたたき分け!~
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製品版のゲーム画面


『太鼓の達人』は、音楽ゲームが多い中、よりカジュアルにユーザーに楽しんでもらえる操作性と仕組みを考えて、特許を取得したゲームです。当時は、1本のレーン内に「ドン」と「カツ」の種類があって、たたき分けができるところが新しかったですね。

――なるほど。キャラクターの「どんちゃん」「かっちゃん」とかも、すごくかわいくて大人気ですよね。

実は、特許出願時と製品版で、レーンの本数や向き、キャラクターなど、大きな変更があった作品でもあります。

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特許出願当時の画面


――え、どんちゃんって、最初は存在していなかったんですか? ……って、特許出願当時の画面に見知らぬお祭り男が⁉ どんちゃん、かっちゃんじゃなくて“どんさん、かっさん”と呼びたくなる風貌ですね。企画段階と製品版で、いろいろ変わることもあるんですね。

そうなんです。製品になるまでに企画もどんどんブラッシュアップされていきますからね。

また、特許出願をしたけどボツになった案としては、「どんちゃんのぬいぐるみの中にコントローラーを入れて、それをたたく」という面白いものもありました(笑)。


■その3:『AKB1/48 アイドルと恋したら…』~女の子をひたすらフリまくる! 斬新すぎるアイデア~
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「女の子をひたすらフリまくるゲームってないよね」という斬新なコンセプトから、アソビの仕組みをフロー図化、文章化して特許を取得しました。

――すごく話題になりましたよね。

企画段階で「AKB48のメンバーをこうやってフッていきます」くらいしか内容が決まっていない中、「できるだけ早く世の中に発表したいので、特許出願も早めにお願いします」と言われて……。面白さをどのようにして言語化、フロー化するか、分かりやすさとスピード感を同時に求められた思い出がありますね(笑)。

でも、「一緒に仕事をしている企画や開発などのメンバーが困っていたら、いつでも全力で助けたい!」という気持ちがあるので、それができるよう知財部もスピード感を持って仕事をするのが大事だと思っています。

――へえ! 恩田さんたちのスピーディーな仕事ぶりのおかげで、いち早く世の中の男性たちにゲームの魅力を伝えることができたんですね 。

余談ですが、実はバンダイナムコエンターテインメントには「恋愛ゲームで革新的なことをしたい!」というアツすぎるパッションを持った社員がたくさんいます(笑)。
恋愛ゲームは、システムや推しのキャラなどに夢中になってくれるユーザーが多い分野です。ファンの方々に喜んでもらえるよう、クリエイターも底知れぬ愛と情熱で開発に取り組んでいるんですよ。

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女の子をフる仕組みをフロー化


――『AKB1/48 アイドルと恋したら…』は、女の子の気持ちをフるなんて! と思いつつ、最終的には推しと、推しだけと結ばれたい……!そんなピュアさがうかがえます。


■その4:『鉄拳』~魅せる演出には、新技術が盛りだくさんだった!~
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業務用アーケードゲームとしてリリースされてから20年以上になるので、特許に関しても進化の歴史が詰まっている作品です。
大きく分けると「①パンチやキックなどの操作方法」「②キャラクターの影、汗や血しぶき、服の汚れ方などの画像処理」「③ネットワーク対戦の仕様」「④モーション」など、操作性の部分と表現の部分で特許を取得しています。

――おお、そんなにいろいろな部分に、特許が詰まっていたんですね。勝手なイメージなんですが、技術や仕組みをたくさん入れると、ゲームの容量がパンパンになって操作性が鈍くなる……なんてことはないんですか?

ハードの進化に合わせて、「派手だけど負荷をかけない演出」ができる技術を入れるようにしていますから、大丈夫ですよ 。
さらに、負荷をかけない仕組みについても、特許出願をしている場合があります。


■その5:『エースコンバット』~さまざまな表現やプログラムが詰まった“特許の塊”~
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これも長年支持されているタイトルで“特許の塊”といわれています。キャノピーの見え方や、雲の繊細な表現、飛行機の撃墜マーク、機体の破壊方向など、さまざまな表現やプログラムが特許になっているんです。

――そんな細かいところまで全部特許だったなんて! 全然知らなくてごめんなさい!!

飛行機ゲームの数自体、それほど多いわけではありませんが、それでも「他のゲームとは違う新しいことを!」と、多くの仕組みやアイデアが取り入れられていますよ。

――遊んだことのある有名なゲームが、実はたくさんの特許の塊だったとは……! また、意外なところが「特許=新しいアソビ」として認められていることに驚きました。

そうなんですよ! ゲームは、新しいことの積み重ねで進化しています。つまり、最新技術を取り入れ、特許を取り続けていくことが、脈々とゲームの進化につながっていくと言えます。


■IPの個性を生かす工夫をし続けてきたからこそできる「知財&開発」の新しいアソビ発明
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――どうやら特許は、新規性・進歩性がないと取得することができないとのこと。つまり、特許は新しいアソビ作りにダイレクトにつながっているということです! バンダイナムコエンターテインメントでは、新しいアソビを生み出すべく、知財部もクリエイターの方々と一緒にゲーム開発に取り組んでいるそうですね。

そうなんです。一般的には、開発部門だけが単独でゲームを開発し、その過程で特許になる発明が生まれる……という流れだと思います。しかしバンダイナムコエンターテインメントの場合は、最新の流行・技術動向などをヒントに、知財部発信で事業部やグループの開発会社などを巻き込みながら、クリエイターへ相談・提案もしています。
「こういうアイデアや仕組みって実現できないかな? できたら、製品やサービスで将来役に立つかもしれない。さらに特許も 取れるかもしれないんだけど」と。
特許を取るには新規性・進歩性が必要なので、スピード感を持って取り組めるよう密に連携しているんですよ。

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バンダイナムコエンターテインメントの知財の取り組み


近年はキャラクター主体のゲームが多いです。「個性を生かすための工夫はどこに入ってる?」という観点で、他と差別化を図るための仕組みやアイデアを、クリエイターと一緒に考えることが多いかもしれません。
また、そのクリエイターが、どういう視点でユーザーを楽しませたいのかを引き出してあげることも意識しています。クリエイターはみんな、とにかく熱い気持ちを持ってゲームを作り続けていますから、現場が考えている面白いことを見逃さず、発明として刈り取ってあげる仕事とも言えますね。

――おおっ! たくさんのキャラクターやゲームの個性を生かす工夫をし続けてきたバンダイナムコエンターテインメントだからこそ、新しいアソビの発明ができるんですね! さらに、特許に関する膨大な知識がある知財部だからこそ、企画段階から積極的な提案ができると。

バンダイナムコエンターテインメントの知財部の仕事は、まだ世の中に存在しない新しいアイデアを言語化し、新しいアソビの仕組みを ‟見える化”することです。ですから特許の仕事は、バンダイナムコエンターテインメントの「お客様にエンターテインメントを届ける」という企業理念に、大いに貢献できる仕事だとも感じています。
今後も職種や役割にとらわれず、広い視野を持って、「お客様に喜んでもらえる仕組み起点」「開発起点」「特許起点」で製品を開発し、新しいアソビを提供していきたいですね。

――本日はありがとうございました!

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【取材後記】
バンダイナムコエンターテインメントならではの「知財&開発」の強力タッグで、スピード感のある発明の拾い出しをしているとお話しくださった恩田さん。

「特許はどこまで、どうすれば出願できるかが、私たち知財部の腕の見せどころです。そうやってクリエイターのスピード感に合わせないと、現場の人たちに信頼してもらえないですから。仲間の助けになれるようにという気合いで、仕事してます!」

インタビュー中に飛び出した言葉からは、恩田さんの仕事への情熱と、仲間への愛情を感じました。

今後も、ゲームだけにとどまらず、あらゆるエンターテインメントの分野において特許が重要なテーマになることは間違いないはず。「もしかしたらこれも特許かも……⁉」という視点で、新しいアソビを楽しんでみるのもいいかもしれませんね。

前回のお話はこちら ↓ ↓ ↓
【ゲームと特許の話】バンダイナムコ・知財部の恩田明生さんに聞いてみた

【取材・文 矢郷真裕子】
フリーランスの編集者・ライター。さまざまなゲームキャラクターの感情に触れて感動しながら成長。

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