
一億総プロデューサー時代到来!?バンダイナムコ×文化放送「&CAST!!!アワー」の挑戦
バンダイナムコエンターテインメントが手掛ける動画ライブ配信サービス 『&CAST!!!』と、アニメやゲームをテーマにしたインターネット放送局『超!A&G+』などでも知られる文化放送がタッグを組んだ動画ライブ配信 /放送番組「&CAST!!!アワー」。エンタメ企業とラジオ局がキャラクターコンテンツの新領域に挑みます。
リスナーと創造する新たなユニバース。IPビジネスの新領域
■「&CAST!!!アワー」は “参加する楽しさ”が魅力
▲文化放送取締役放送事業局長・片寄好之さん(左)、バンダイナムコエンターテインメントNE事業部ゼネラルマネージャー・桝井大輔さん(右)
――まず桝井さんにうかがいたいのですが、「&CAST!!!アワー」が生まれるきっかけとなった動画ライブ配信サービス 『&CAST!!!』は、どんな風に立ち上がったのでしょう?
桝井:私たちが「バンダイナムコゲームス」から「バンダイナムコエンターテインメント」に社名を変えてゲーム以外のエンターテインメントも提供したいと考える中、現代は多くの方がスマートフォンで動画を楽しんでいるという状況がありました。
そこで、その方々のニーズに僕らが得意とするゲームの要素を掛け合わせたら、新しいものが生まれるんじゃないかと考えたんです。ライブ配信 ならではの双方向的なコミュニケーションに、同じくインタラクティブなコミュニケーションであるゲームを組み合わせようと思ったのが、『&CAST!!!』のはじまりでした。
――ソーシャルゲームでは、ゲーム配信開始後にユーザーからの反響を受けて内容が変化していくことも多いですよね。
桝井:そうですね。同じように、ライブ配信もユーザーとの双方向的なやりとりによって内容が変わります。その2つが合わさることで、面白いものが生まれると考えたんです。
――一方で、片寄さんが長年たずさわってきたラジオも、リスナーとの双方向性が大きな魅力になっているメディアだと思います。
片寄:そうですね。文化放送は『超!A&G+』という、アニメ/ゲーム/声優コンテンツ専門の動画インターネットラジオも配信していますが、それを桝井さんに見つけていただいて。そこから意気投合して、「&CAST!!!アワー」がはじまりました。双方向的な魅力は、ラジオがこの60年間ずっとやり続けてきたことでもあります。方法自体はハガキやFAX、電話、メールやSNS、そして『&CAST!!!』のような新しいサービスなど時代ごとに変わりますが、私たちがやってきたことはずっと「リスナーの方々とのコミュニケーション」でした。
桝井:私たちはゲーム制作をメインにやってきた人間なので、春に試験的に番組配信を開始した際に、「ノウハウがないと厳しいぞ……」と、番組作りの大変さを実感したんです。そこで、文化放送さんにお声がけさせていただきました。さきほど片寄さんは意気投合したとおっしゃっていましたが、実際は、僕らから手助けをお願いしたというところです(笑)。
――文化放送では、面白い番組を作るためにどんなことを意識されているのですか?
片寄:それはやはり、リスナーと真摯に向き合うことです。ラジオはまるで自分だけに話しかけてくれているような感覚になる、パーソナルなメディアです。送り手と受け手の心理的な距離が近いんですね。ですから、その距離感は大切です。また、TVなどと比べると、ひとりが話す量も多く、MCの人間性が浮きあがるのも魅力です。ブッキングは人柄重視で考えますし、リスナーのお便りにもきちんと対峙して、それに応じて内容を変化させることも大事です。
――その“みんなで番組を作っていく”という仕組みが、『&CAST!!!』が実現したいことと同じものだった、と。視聴者が参加して、ある部分では、みんなで番組のプロデューサー的な役割も担っていくというイメージでしょうか?
桝井:そうですね。『&CAST!!!』の場合はそこにキャスト側からユーザーの方々が見えるという特徴も加わっていますので、その双方向性をより広げていきたいと思っています。
■キャスト陣の魅力に溢れた番組が続々登場。各番組の魅力とは?
――「&CAST!!!アワー」の番組内容は、どんな風に考えられたのですか?
桝井:まずは毎日配信の昼の帯番組「&CAST!!!アワー ラブランチ!」に着手して、それを1か月ほどで立ち上げました。振り返ってみると、すごいペースですね(笑)。
片寄:ラジオの場合、面白い話題が生まれたら「これを1時間やろう」と決めてもいいわけで、番組の内容を最初からガチガチに決め込む必要はないんです。その番組の面白い部分を探って、いいところを伸ばすことが、非常にやりやすいメディアなんですよ。
桝井:僕らが仕事にしているスマートフォンのゲームでも、ユーザーの方々の反応も見つつ新たなイベントやキャラクターを加えていくので、そういう意味での親和性も感じました。
――ソーシャルゲームもラジオも、番組や配信がはじまったところからがスタートだ、と。
桝井:だからこそ、「いい番組を作ろう」という目標に一緒に進めているように感じます。
桝井:番組としては、現在「&CAST!!!アワー ラブランチ!」「&CAST!!!アワー ラブナイツ!」の2番組と、「&CAST!!!アワー ダブルデッカー 〜リスヴァレッタ放送局〜」がはじまっています。
最初にスタートした昼の帯番組「&CAST!!!アワー ラブランチ!」は、チャレンジ精神がある若手の男性声優さんに出ていただいて、実験的に色々なことに挑戦できるようなものにしています。ただ、もうひとつ、ラジオの花形として「深夜ラジオ」もぜひ実現したいと思って、一か月後に「&CAST!!!アワー ラブナイツ!」をスタートさせました。
片寄:「&CAST!!!アワー ラブランチ!」はMCが若手の方々なので、慣れていないことも魅力です。2人のMCがお互いに支え合いながら、リスナーにも支えていただきながら番組が進みます。一方で「&CAST!!!アワー ラブナイツ!」は、MCを務める男性声優さんがキャリアも人気もある方々ばかりで、トークも非常に上手い。そこで、企画としても「お悩み相談」のように、少し踏み込んだ内容にしています。
桝井:「&CAST!!!アワー ラブナイツ!」がスタートしたときに、同時に「&CAST!!!アワー ラブランチ!』の視聴者数が倍増したりもして、相乗効果的な広がりも感じていますね。
片寄:今はそれほど知名度がなかったとしても、ラジオ番組と声優のお仕事の両輪がかみ合って人気が出る方もたくさんいるので、そこも楽しみにしていただけると嬉しいです。
桝井:また、TVアニメ『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』をテーマにした「&CAST!!!アワー ダブルデッカー 〜リスヴァレッタ放送局〜」のように、IP=キャラクターを生かした番組作りも進めます。ゆくゆくは、文化放送さんとバンダイナムコエンターテインメントで、一緒にIPを育てていくような取り組みができると嬉しいな、と思っているところです。
■“みんなでつくるIPビジネス”で「新たなユニバース」を生み出したい
――動画ライブ配信やラジオといった双方向性のあるメディアと、キャラクタービジネスが組み合わさると、どんな“アソビ”が生まれるのでしょうか?
桝井:たとえば、リスナーのみなさんとキャラクターを一緒に作る、というのはひとつの可能性です。通常IPはプロが作り込んだものを世に出しますが、そのよさは大事にしつつ、同時に、新たな形が加わってもいいと思うんです。実際、ユーザーの意見を取り入れた作り方をするIPは既に出てきていますし、この流れは今後より加速していくと思います。
――その結果、想像を超えたものが出来上がる可能性もあるかもしれません。
桝井:そうですね。そして、そこにライブやイベントのような“体験”が結びつくと、より一体感が生まれるとも思います。「&CAST!!!アワー」のような取り組みが、そういったことに適したIPが生まれる場所や、新しいアソビを生み出す場所になると嬉しいですね。文化放送さんはどんな提案でも可能性を探ってくださるので、こちらも可能性を試してみたくなるんですよ。「まだNOとは言われていないぞ!」と(笑)。
――新しいアイディアは次々に生まれているのですね。
桝井:先ほどお話したライブやイベントと融合していくような新しいIPビジネスは広がっていくでしょうし、文化放送さんとバンダイナムコエンターテインメントの取り組みに興味を持ってくれる方々の輪を広げられたなら、それはとても強いものになると思います。
片寄:それぞれの強みを生かして、手を取り合うことで新しいエンターテインメントが提供できるなら、こんなに楽しいことはないですよね。その結果、「&CAST!!!アワー」からまだ世にはない、新しいジャンルを生み出していきたいと思っています。
片寄:様々なアイディアや、ユーザーの方の意見を取り入れて、「&CAST!!!アワー」のユニバースを広げていく。そこにはリアルコンテンツもあり、IPコンテンツもあり、歌が加わる可能性だってあるかもしれません。「&CAST!!!アワー」から生まれたものを、エンターテインメントの360°すべての領域に広げていきたいと思っています。
桝井:キャストの方々が新人からデビューして、成長していく過程も見ていただきたいです。たとえば『&CAST!!!』で配信をスタートさせた方が、力をつけて「& CAST!!!アワー ラブランチ!」のMCになって、声優としてより活躍して、満を持して「&CAST!!!アワー ラブナイツ!」のMCになるなど、様々な可能性が考えられますよね。制限を設けることなく、色々な形で面白いエンターテインメントを提案していきたいと思っています。
【取材後記】
「&CAST!!!アワー」では新番組も多数決定しています。2018年の大晦日には、初の年末特番を放送。また、2019年1月からは、声優の青木瑠璃子さんがMCを担当する「&CAST!!!アワー ラブパレット!」や、土曜午前に配信のエンタメ領域の情報番組「&CAST!!!アワー ラブテン!」もスタート。また、「&CAST!!!アワー ダブルデッカー 〜リスヴァレッタ放送局〜」の後番組として、『&CAST!!!』発のオリジナルIP『神酒ノ尊-ミキノミコト-』の番組「&CAST!!!アワー 竹本英史・新井良平のLOVE♥SAKE by神酒ノ尊」もはじまります。さらに、アニメ『クイーンズブレイド』のスマートフォン向けブラウザゲーム『クイーンズブレイド WHITE TRIANGLE』と連動した新番組「&CAST!!!アワー クイーンズブレイドTRIANGLEスクランブル」も開始しています。 「&CAST!!!アワー」から生まれる“新たなアソビ”に注目です!
お互いを信頼しつつ、和気あいあいと話を進める雰囲気からは、新しいエンターテインメントを生み出す方々ならではの、「楽しむことの大切さ」が伝わってくるようでした。
【取材・文 杉山仁 プロフィール】
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。