第6回:サウンドチーム【1】
高橋 弘太
「本当は、BGMは全編ロックで埋め尽くすつもりでした。」
なんて言ったら、リッジファンのみなさまは卒倒するでしょうか?
サウンドディレクターのコータです。

リッジレーサーシリーズは、音楽に対するユーザーの注目度が非常に高い作品です。続編が出る度に音楽性が変わっていて、毎回賛否両論あり。
時代時代のリッジサウンドファンの、当時と同じようにして欲しいという熱い要望。
しかし、その時代に一番「キテる」音楽を取り込んで歩んできたリッジの不文律と相反してしまうわけです。従った瞬間、リッジがリッジであることを放棄してしまう。
それはさながらアーティストとファンとの闘いのよう。

リッジらしく歩み進めつつも、2000年に迎えるべき形とは、一体?

一時期は、「ゲーム界のフジロック」みたいにしよう!という方針で進んでいました。
結果としては、テクノが多くなりましたが、音楽のバトルロイヤル的なところが、近いモノがある気がします。
で、実際の曲制作ですが、これまでアーティストと肩を並べるなんてことは経験したことがなかったわけで、気合いと緊張感はこれまでの比ではありませんでした。今までのやり方を見直し、新しいレコーディング方法にトライして、アーティストに肉迫するサウンドになったと思います。

音楽性以外のところでは、新しい試みをいくつも企画したせいで仕事量が殺人的に増えてしまい、帰宅時刻は天井知らず、残業時間は狂気の沙汰、寝ても覚めても仕事仕事。
それでも自分自身ゲームファンなので、改めてその視点で全てをチェックし、今まで見逃しちゃってたところも全部、痒いところにまで手を届かせてるつもりです。

例えばのオマケ:レース中のポーズメニュー画面であるキーを押すと、BGMの曲目、ON/OFF、音量までいじれます。その際のキー操作も、左右だけでなくショートカットキーとして上がRANDOMで、下がMUTEです。

柿埜 嘉奈子
こんにちは!リッジV効果音担当のカキノです!

今回のこだわりは、「次世代ゲームとしての効果音」です。
あまりにも漠然としすぎていて、なんのこっちゃ、って感じなんですけど、でも、強いて言うなら、やっぱり「次世代の効果音」。

何が今までと違うのか?
それはまず、画像のクオリティーが違う、ということ。
「え?それって絵のことじゃん?アンタはサウンドでしょ?」って思われがちですが、音は映像とのバランスが重要。
すっごい綺麗な画面にすっごいしょぼい音つけちゃったら、絵が台無しです(笑)。
というわけで、まずは効果音ひとつひとつのクオリティーアップを試みました。
その為には、時速300km近い車に乗せてもらったり、水冷式と空冷式のエンジンの違いについて語ったり、ホームセンターにパイロンを買いにいってもらったり(なぜ?何の為?)…。
と、開発中はずっと車漬けの日々をすごしました。車の免許も持ってないのにね(笑)。そうやって、今回のエンジン音達は生まれたのでした。


それから、セレクト音。
これもちょっと今までとは違った雰囲気を出してみました。
セレクト音もそろそろ「次世代のセレクト音」になってもいいんじゃないかと思って。
「なんか、リッジVのセレクト音って、変な音だよね?」って感じた方!!
ありがとうございます。それ、それ。


他にも、いろいろな音を盛り込みました。
ヘリでしょ、カモメでしょ、飛行機でしょ、各種路肩の音でしょ・・・、それらは雰囲気であり、無意識に人が聞いている音であり、存在感のほとんどを「空気」に依存している物達です。

そして、エンジン音や各種効果音を元にリッジシティーの全体の雰囲気を作り上げました。
リッジシティーの音を作ること、即ちリッジシティーの空気を作ることです。
要するに、「雰囲気=空気=音」ということ。

どうでしょう?皆さんのところにリッジシティーの空気はお届けできたでしょうか?
聞き耳を立てて、いろんな細かい音を聞いてください!ということじゃなくて、音を、雰囲気を、アナタの身体で感じてください!!と、言いたかったのでした。