「人はすべからく、力への意志によって突き動かされている」 本作はニーチェのこの言葉を基底に、様々な出来事、登場人物の行動理由が設定されています。世界を支配するのも、その支配から逃れるのも、他人を虐げるのも、他人を癒すのも、すべて「力への意志」である、とニーチェは定義づけています。 全ての登場人物の、行動理由の根幹にあるもの「力への意志」。本作はそれをテーマとしています。 また、この力への意志の解釈の一つに、恐怖の超克というものを考えています。人はこの世界に生まれ落ちたその瞬間から、様々な恐怖に支配されます。 |
未来への恐怖、自己への恐怖、他者への恐怖、未知の存在への恐怖、生きることの恐怖、死の恐怖……。人が生きていく限り、それら恐怖から逃げることは出来ません。従って、人は様々な手段でこれを回避しようと模索し、悩み苦しむことになるのです。 その結果、人は不安定な存在となり、他人を否定し、自己を正当化し、超越者への依存に頼り、争う反面、お互いに寄り添い、心を触れ合わせ、その結びつきを強固なものにもします。 |
今作の登場人物達は、皆それぞれ何らかの恐怖を心の内に持っています。ある者はそれから逃避し足掻き、またある者はそれを克服しようと真正面から挑みます。
人の意識を束縛しつつも、人を人らしくしている要因である恐怖。これを超克し、新たな意識体として人が、そして宇宙が進化していく術は果たしてあるのか? といった自己、そして世界に対する疑問を、作品全体を通して解明していきます。 |
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