ジークフリート・シュタウフェン
 父の仇を討つべく、無敵の剣を求めて紛争地域を渡る若き傭兵騎士隊長。父の仇敵は未だ発見できず、またそれに必要な無敵の剣“ソウルエッジ”も、無論探し出せずにいた。

早く手に入れないと、父上の無念が晴らせない。早くしないと……

……「イタリア戦争」遂行により国内が空白化していた“神聖ローマ帝国(ドイツ)”内で、「領主」や「富農」の重圧に堪え兼ねた農民達が一斉に蜂起した事がある。驚いた領主たちは麾下の騎士を召喚し、応えた騎士も傭兵を伴って入城。永久に傷の癒えぬ城塞には再び軍旗が翻り、反対に縁絶えぬ村々にはたちまち業火が吹き荒れようとしていた。
 そもそも『騎士道』とは「貴族や領主にのみ適用されるもの」である。従って多くの騎士達は、当然領主を守るために闘ったのだが、一部の騎士は「真の騎士道に於て忠義と正義とは別問題である」と解釈する。つまり彼等は、仕える主に反旗を翻し、配下の農民達を護るべく果敢に闘ったのだった。
 帝国辺境に本拠を置く騎士の3男・フレデリックもそんな騎士の一人である。
 1年で終息すると予想された戦は、頑強な抵抗から長期化した。その間に農民側の諸騎士は相次いで合流、城塞都市“オーバーゲッツェンベルグ”を拠点と定め、歓呼の中入城する。そして入城から数日を経た晩、フレデリックは娼婦マーガレットと知り合い、一夜限りの契りを交した。…確かにその時は「心身を癒す為」だけの関係であった。だが、彼女が我が子を生んだ事を知らされた時、「自分は彼女を本気で愛していたのだ」と悟る。
 早速彼は最愛のマーガレットと我が子を呼びよせた。そして息子を抱き上げると、万感の思いを込めて「ジークフリート」と名付けたのだった。

 名を授かってより数年。常に“優しい騎士”として剣技を教えてくれた父は、もういない。『農民蜂起の戦』の終結後再度皇帝に召喚された父は、再会をマーガレットに約束すると、「帝国騎士」として他国遠征に旅立ってしまっていたのだ。だが、女手一つで息子を育てるには、かの国内情勢はあまりに過酷すぎた。
 母の眼差しが注がれなくなるにつれ、彼は次第に良からぬ者と徒党を組み、恐喝、強盗等を生き抜く手段に選ぶようになる。そして彼が「黒い風(シュヴァルツヴィンド)」と恐れられた“盗賊集団”の頭領となるのにも、さして時間はかからなかったのである。
 「聞け!!今日は、いつもより多くの収穫が望めそうだぞ!」
 襲撃を前に逸る手下に、頭領ジークフリートは狙う“獲物”の説明をする。
 「今夜、遠征先から逃げ帰った『腰抜け騎士』の隊列が、我等の集うシュヴァルツヴァルト(黒い森)を通過するという情報が入った。女はいないが、奴等の装備は町で喰い物に化けるぞ。いいか、気合いを入れてかかれ!」
 敗軍の将率いる隊列が森に差しかかったとき、盗賊共は一斉に獲物目がけて襲いかかった。無論疲労の極みにある騎士など彼等の敵ではなく、勝負は呆気なくついてしまう。そして仕上にジーク自ら、自慢の「ツヴァイハンダー」で騎士隊長にとどめをさし……落ちた首を高々と月光にかざしたジークの勝鬨は、しばらくして驚愕の悲鳴に変わった。

鳴呼、彼はもっと早く思い出すべきだった…優しき帝国騎士・フレデリックの面影を。

……おのが手で我が父の命を絶ったという事実!ジークがそれを現実の物として受け入れるには、まだ、若過ぎた。咆哮をあげながら森を徘徊した彼が我に返ったときには、もはや『逃避』という狂気にすがる他に道が無かった。そして彼の記憶はその日から、“父は誰かに殺されたのだ”と頑なに思い込む事で歪められたのである…。  今日も彼はいるはずのない「父の仇敵」を倒す為、噂の無敵の剣“ソウルエッジ”を探す戦闘に臨む。早く手に入れないと、父上の無念が晴らせない。早くしないと……

■ステージ設定
 傭兵ジークの参加する、ドイツ南西部における「オストラインスブルク城攻略戦」

 独立騎士ステファンと、アンドレ候の帝国内における戦争。ステファンの居城は一見城塞都市と錯覚するが、単体の城で、4重の城郭は片面半径3キロを越える。この為過去の攻城戦ではびくともしなかったが、「兵士突入戦」ではなく、巨大砲撃兵器により城郭を飛び越し、直接本塔を壊滅せしめるアンドレ候の戦術の前に、遂に屈しようとしていた。